「自分を大切にする」がしんどい3つの理由と3つの向き合い方

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  • 「自分を大切にしてください」
  • 「もっと自分を好きになりましょう」

そんな言葉を、これまでに何度も目にしたり聞いたりしたことがあるかもしれません。ただ、実際にそう言われても、具体的に何をすればいいのか分からず、かえって疲れてしまう。そんな経験はないでしょうか。

例えば、こんな感覚に心当たりがある方もいるかもしれません。

「自分を大切に」と言われても、具体的に何をすればいいのか分からない

人からほめられても、素直に受け取れない

できていない自分の方が目についてしまう

この記事では、なぜ「自分を大切にする」、つまり自己肯定感を持つことがこんなにもしんどく感じられるのか、その理由を心理学の視点から一緒に見ていきたいと思います。そのうえで、自己肯定感を無理に高めようとするのとは少し違う「セルフコンパッション」という向き合い方も紹介します。

この記事でわかること
  • 自己肯定感とセルフコンパッションの違い
  • 「自分を大切にする」がしんどく感じる3つの理由
  • 今日から意識できる、3つの向き合い方

自己肯定感とセルフコンパッションとは

自己肯定感とは

自己肯定感とは、「ありのままの自分に価値がある」と感じられる感覚のことです。特別な成果を出せていなくても、失敗してしまった自分であっても、「自分には自分なりの意味がある」と思えるかどうか、という感覚だと言われています。心理学では自尊感情(self-esteem)と近い意味で使われることが多く、日本では「自己肯定感が高い・低い」という言い方でよく語られています。

簡単に説明すると、自己肯定感とは、「『自分には価値がある』『自分はこれでいい』と感じることです

例えば、仕事で結果を出せなかったとき、「今回はうまくいかなかったけれど、自分自身の価値が下がったわけではない」と思えるかどうか。それが自己肯定感の高さに関わってくる、というイメージです。

セルフコンパッションとは

一方、セルフコンパッション(自分への思いやり)は、アメリカの心理学者クリスティン・ネフが2003年に提唱した、比較的新しい考え方です。「自分の価値を評価する」という発想からいったん離れて、「つらいときの自分に、どう接するか」に焦点を当てているのが特徴です。

簡単に説明すると、セルフコンパッションとは、「うまくいかない自分、失敗した自分にも、思いやりを向けること」です

うまくいかなかったときに自分を責めるのではなく、大切な友人にかけるような言葉や態度を、自分自身にも向けてみる。それがセルフコンパッションの基本的な考え方です。

共通点と違い

どちらも「自分自身との関わり方」を扱う概念という点では共通していますが、着目しているポイントが異なります。

自己肯定感セルフコンパッション
自分の価値を「評価」する感覚自分にどう「接するか」という態度
高い・低いで語られやすい実践できているかどうかで捉える
他者との比較で揺らぎやすい比較に左右されにくい

例えば、仕事で大きなミスをしてしまった場面を考えてみます。

自己肯定感の発想では

「こんなミスをする自分には価値がないのでは」と、自分の価値そのものが揺らいでしまうことがあります。

セルフコンパッションの発想では

「ミスをしてつらいよね」とまず自分の気持ちに寄り添い、「誰にでも起こりうることだ」と捉えたうえで、次にどうするかを考えていく、という順番になります。

このように、自己肯定感とセルフコンパッションはどちらも自分との向き合い方に関わる概念ですが、アプローチの仕方が異なります。次の章で見ていくように、自己肯定感を無理に高めようとするのではなく、セルフコンパッションという「自分への接し方」に目を向けることは、一つの選択肢になります。

「自分を大切にする」がしんどい3つの理由

アメリカの心理学者ジョアン・ウッドらが2009年に行った実験では、自己肯定感が低い人に「私は素晴らしい人間だ」といった前向きな言葉を繰り返し自分にかけてもらったところ、かえって気分が落ち込んでしまった、という結果が報告されています。

「自己肯定感を高めよう」とすること自体がプレッシャーになり、うまくできない自分をまた責めてしまうという悪循環が起きている可能性があります。

心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した社会的比較理論によると、人は自分を評価する際、無意識のうちに周りの人と比べてしまう傾向があるといわれています。

SNSなどで他人の「良く見える部分」に触れる機会が多くなり、周りと比べて、「自分なんて」と評価が下がりやすくなっているのではないでしょうか。

自分に厳しくすることに慣れていると、いざ自分に優しく接しようとしたときに、かえって落ち着かない気持ちになることがあります。心理学者ポール・ギルバートらの研究では、こうした「自分への思いやりへの抵抗感」が実際に存在することが示されています。

「自分を甘やかしているのでは」という感覚も、この抵抗感の一つの表れと言えるかもしれません。

「自分を大切にする」がしんどくても、大丈夫

ここまで見てきたように、「自分を大切にする」がしんどく感じられるのには、それぞれちゃんとした理由があります。

「自分を大切にする」がうまくできない自分を、そのまま責める必要はないと思います。

否定的に物事を捉えやすいことにも、これまでうまく乗り越えてきた場面があったのではないでしょうか。自己肯定感を無理に高くすることだけが正解とは限らず、「否定的に見てしまう自分」を、そのまま受け止めることも、大切にしていいと思います。

「自分を大切にする」をちょっとだけ楽にする3つの向き合い方

自己肯定感は、これまでの経験の積み重ねの中でできあがってきたものなので、意識するだけ・気合いだけではすぐには変わりにくいものです。ただ、無理に変えようとするのではなく、「今の自分にどう接するか」という向き合い方を知っておくことはできます。ここでは、セルフコンパッションを構成する3つの視点を紹介します。

「自分を大切にする」と聞くと、「嫌なことは全部しなくていい」「好きなものだけ食べればいい」といった“自分を甘やかすこと”をイメージする人もいるかもしれません。

セルフコンパッションは、単に自分を甘やかすことではありません。

つらいときには自分をいたわりながらも、必要であれば自分の行動を振り返り、次にどうすればよいかを考えていく。そこも含めて「自分に思いやりを向ける」という考え方です。

向き合い方1:セルフカインドネス(自分に優しく接する)

自分を責める代わりに、友人にかけるような優しい言葉を自分にもかけてみる、という視点です。

例えば、仕事でうまくいかなかった日には、「今日はよく頑張ったね」「これくらいで十分だよ」というように、頭の中で唱えるだけでなく、実際に声に出したり、スマホのメモに書き出したりしてみるのも一つの方法です。

ネフが提案する「セルフコンパッション・ブレイク」というワークでは、つらいと感じた瞬間に、手を胸に当てながら「これはつらい瞬間だ」「自分だけじゃない」「自分に優しくしてもいい」と、3つの視点を短く心の中で唱える、というシンプルな方法が紹介されています。

向き合い方2:共通の人間性(自分だけじゃないと知る)

「こんなふうに感じるのは自分だけかもしれない」と孤立して捉えるのではなく、「人間なら誰しも、こういう瞬間があるのではないか」と捉え直す視点です。

例えば、仕事でミスをして落ち込んだときに、「こんな失敗をするのは自分だけだ」ではなく、「新しいことに挑戦していれば、誰にでも起こりうることだ」と言い換えてみる、という具合です。

失敗やつらさを、自分だけの特別な欠点としてではなく、人が誰しも経験しうるものの一部として位置づけてみることも、大切だと思います。

向き合い方3:マインドフルネス(感情をジャッジせず受け止める)

湧いてきた感情を「良い・悪い」で判断せず、まずはそのまま眺めてみる視点です。

具体的には、「今、私は不安を感じている」「悲しい気持ちがある」というように、今の感情に短い言葉で名前をつけてみる方法があります。

心理学者リーバーマンらの実験では、感情に言葉でラベルを貼るだけで、脳の中で不安や恐怖に関わる部位の反応が落ち着きやすくなることが報告されています。

「こんなふうに感じてはいけない」と抑え込むのではなく、「今、こう感じているんだな」と一度受け止めてみることも、一つの向き合い方かもしれません。

まとめ

この記事のまとめ
  • 自分を大切にする」がしんどいのには、前向きな言葉の逆効果・他者比較・自分への優しさへの抵抗感、という3つの理由が関わっている可能性がある
  • 自己肯定感は積み重ねでできているため、気合いだけではすぐには変わりにくい
  • セルフコンパッションの3つの視点(セルフカインドネス・共通の人間性・マインドフルネス)は、自分を「変える」のではなく「今の自分とどう接するか」を考えるヒントになる

もし日常生活に支障が出るほどつらさが続く場合は、一人で抱え込まず、専門家に相談することも選択肢の一つとして考えてみてもいいかもしれません。

もし、こうした自己肯定感とセルフコンパッションの違いについてもう少し詳しく知りたいと感じたら、本を読んでみるのもひとつの方法です。

『セルフ・コンパッション[新訳版] 有効性が実証された自分に優しくする力』

クリスティン・ネフ 著/石村郁夫、樫村正美、岸本早苗、浅田仁子 訳/金剛出版

セルフコンパッションという概念を提唱した著者本人による代表作です。心理学研究をもとに、自己肯定感との違いや、自分に優しくすることの効果がていねいに解説されています。

『マインドフル・セルフ・コンパッション ワークブック 自分を受け入れ、しなやかに生きるためのガイド』

クリスティン・ネフ、クリストファー・ガーマー 著/富田拓郎、大宮宗一郎 訳/星和書店

この記事で紹介したマインドフルネスの視点も取り入れながら、セルフコンパッションを実践するためのワークが数多く収録されています。「頭でわかった」を「実際にやってみる」に変えたい方向けです。

『自分を解き放つセルフ・コンパッション』

クリスティン・ネフ 著/木蔵シャフェ君子、湊麻里 訳/英治出版

より実生活のエピソードに寄り添った構成で書かれた一冊です。理論書はハードルが高いと感じる方には、こちらから読み始めるのもおすすめです。

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