マインドフルネスとは―定義・由来・臨床応用まで

心理学を学ぶ

「マインドフルネス」という言葉は、ビジネス書や自己啓発の文脈でもすっかり見かけるようになりました。ただ、そのぶん「なんとなく良さそうな考え方」として広まりすぎていて、もともとどんな概念なのか、心理学的にはどう位置づけられているのかが、かえって分かりにくくなっている面もあるのではないでしょうか。

今回は、マインドフルネスの定義や由来、そして臨床の現場でどのように使われているかを、できるだけ整理して見ていきたいと思います。

この記事でわかること
  • マインドフルネスの心理学的な定義
  • 仏教の考え方から心理療法として体系化されるまでの由来
  • 認知行動療法の中でのマインドフルネスの位置づけ
  • MBSR・MBCTという2つの代表的なプログラムの違い
  • 臨床現場での実際の使われ方

マインドフルネスの定義

マインドフルネスとは、ジョン・カバットジンによれば、「意図的に、今この瞬間に、評価をせずに注意を向けること」とされています。

マインドフルネスの姿勢

過去の後悔や将来への不安に気持ちが向いていることに気づきながら、「今、ここ」で起きている身体の感覚や思考、感情にも注意を向け、良い悪いといった判断を加えずに観察していきます。

由来:仏教の「気づき」から、心理療法としての体系化へ

現在のマインドフルネスは、仏教を含むさまざまな瞑想・実践の伝統と深い関わりを持っており、その背景の一つとして、仏教における「サティ(気づき)」という概念が挙げられます。評価や判断を加えずに、今起きていることをそのまま観察する、という態度そのものは、仏教の瞑想の伝統の中で長く実践されてきたものです。

こうした瞑想の実践を、カバットジンは宗教的な文脈から離れた医療・健康の文脈に導入し、慢性的な痛みやストレスを抱える人を対象としたプログラムとして体系化しました。

1979年、カバットジンはマサチューセッツ大学医療センターで、慢性的な痛みやストレスを抱える患者を対象とした8週間のプログラムを開始しました。これが後のMBSR(マインドフルネスストレス低減法)へと発展していきます。

心理学の中での位置づけ:認知行動療法の「第三世代」

マインドフルネスは、認知行動療法の発展の中で「第三世代の認知行動療法」と呼ばれるアプローチと関連の深い考え方として扱われることがあります。

世代主な特徴代表的な療法
第一世代目に見える行動そのものを変えることに注目行動療法
第二世代行動の背景にある考え方(認知)の内容を修正することに注目認知療法・認知行動療法
第三世代思考や感情の内容を直接変えることだけではなく、それらとの「関わり方」や「距離の取り方」にも注目するマインドフルネス、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)、弁証法的行動療法 など

つまりマインドフルネスは、「ネガティブな考えそのものをポジティブに書き換える」というよりも、浮かんでくる思考や感情に気づき、それらを評価したり、それに反応して行動したりすることから少し距離を取ることを重視するアプローチと整理できます。

主な技法・プログラム:MBSRとMBCT

マインドフルネスを臨床で活用する枠組みとして、代表的なものに「MBSR」「MBCT」という2つのプログラムがあります。名前は似ていますが、対象としている悩みや目的には違いがあります。

MBSR(マインドフルネスストレス低減法)MBCT(マインドフルネス認知療法)
開発の経緯カバットジンが1979年に、慢性疼痛の患者向けに開発MBSRをもとに、うつ病の再発予防を目的として発展
主な対象慢性的な痛みやストレス、病気に伴う心理的・身体的負担などを抱える人うつ病の再発リスクがある人
内容ボディスキャン、ヨガ、瞑想を中心とした8週間のプログラムMBSRの要素に加え、認知行動療法の考え方も組み込んだプログラム
MBCT(マインドフルネス認知療法)のポイント

MBCTは、うつ病の再発に関連する反芻などの思考パターンに気づき、思考や感情に巻き込まれずに距離を取る力を身につけることを通して、再発予防を目指すプログラムです。

臨床現場でどう使われているか

MBSRは、慢性的な痛みやがん、心臓病といった、身体的なストレスを抱える患者への心理的なサポートとして用いられています。

MBCTは、うつ病の再発予防を主な目的として開発され、その後、うつ病以外のさまざまな心理的問題への応用についても研究が進められています。イギリスの医療・公衆衛生分野のガイドラインを策定するNICEでも、うつ病の再発予防における心理療法の選択肢の一つとして、マインドフルネスを基盤とした認知療法(MBCT)が位置づけられています。

マインドフルネスは単なる「気持ちの持ちよう」ではなく、目的や対象に応じてプログラムが体系化され、臨床現場で活用されている技法です。

まとめ

  • マインドフルネスとは、「意図的に、今この瞬間に、評価をせずに注意を向けること」という心理学的な概念
  • 仏教を含む瞑想の伝統と深い関わりを持ち、カバットジンが医療・健康の文脈に導入してMBSRとして体系化した
  • 認知行動療法の「第三世代」に位置づけられ、考えの内容そのものより、考えとの関わり方の変化を重視する
  • MBSR(身体的ストレス向け)とMBCT(うつの再発予防向け)という、目的の異なる2つの代表的なプログラムがある
  • 臨床現場では、痛みやがんへの心理的サポートから、うつ・不安症の再発予防まで、幅広く活用されている

「なんとなく良さそうなもの」として広まっている分、マインドフルネスは意外と体系立てて説明される機会が少ないのかもしれません。由来や目的まで含めて理解しておくと、関連する技法や研究に触れたときにも、位置づけをつかみやすくなるのではないかと思います。

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