
どうせ自分なんて、うまくいくはずがない

褒められても、たまたまだと思ってしまう

周りの人は、みんな自分よりちゃんとしている気がする
新しいことを頼まれると、「自分には無理かも」とつい身構えてしまう。
そんな自分に、もどかしさを感じている方もいるかもしれません。
結論から言うと、自信は生まれつきの性格ではなく、「できた」という経験と、その受け取り方によって少しずつ育っていくものです。
自信がない状態が続くのは、挑戦を避けるほど「できた」経験が増えないという悪循環が起きているからかもしれません。
- 「自信がない」には、特定の場面で「自分にはできる」と思えない状態と、場面を問わず「自分には価値がある」と思えない状態の2つがある
- 自信が持てなくなる理由は、考え方のクセ・他人との比較・「できた」経験の少なさ・否定された経験の4つ
- 自信は「挑戦する前」ではなく「挑戦したあと」についてくる
- 自信を育てる方法は、小さな「できた」を積み重ねる・「事実」と「評価」を分ける・自分にかける言葉を変える・比べる相手を「過去の自分」にする・信頼できる人の力を借りるの5つ
「自信がない」とは

「自信」という言葉は日常的に使われますが、心理学では1つの定義に決まっているわけではありません。
「自信がない」という悩みは、大きく2つに分けて考えることができます。
「自分にはできる」と思えない(自己効力感)
1つ目は、心理学者のバンデューラが提唱した自己効力感です。
自己効力感とは、ある課題や場面に対して「自分はうまくやれる」と思える感覚のことです。
自己効力感は、一定のものではなく、課題や場面によって変わります。
- 人前で話す場面になると「うまく話せるはずがない」と思う
- 新しい仕事を任されると「自分には無理だ」と思う

わかりやすく言えば、自己効力感とは「これなら自分にもできそう」という見通しのことです。
「自分には価値がある」と思えない(自尊感情)
2つ目は、自尊感情です。
自尊感情とは、自分という人間を全体として「これでいい」「価値がある」と感じる感覚のことです。
日常でよく使われる「自己肯定感」という言葉は、この自尊感情に近い意味で使われることが多いです。
自尊感情が低いと、特定の場面に限らず「自分はダメな人間だ」と感じやすくなります。
| 自己効力感 | 自尊感情 | |
|---|---|---|
| 自信のなさを感じる場面 | 特定の課題や場面など限定的 | 場面を問わず全般的 |
| 自信がないときの心の声 | 「この仕事はうまくできない」 | 「自分はダメな人間だ」 |
2つの感覚はつながっていますが、同じものではありません。
仕事には自信があるのに自分のことは好きになれない、ということもあります。
ひと言でいうと、「自信がない」には「できる自信がない」と「自分を認められない」の2つの形があります。
自信がないと感じる人は少なくない
こども家庭庁が2023年度に行った調査では、「私は、自分自身に満足している」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた日本の13〜29歳は57.4%でした。
(出典:こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」令和5年度)
アメリカやドイツ、フランス、スウェーデンではいずれも7割を超えており、日本の若者の割合は低めです。
日本では、謙遜を大切にする文化から、自分の評価を控えめに答えやすい傾向も指摘されています。
いずれにしても、自信がないと感じるのは珍しいことではありません。

自信のなさは、病気や性格の欠点ではありません。これまでの経験や考え方のクセから生まれる状態なので、少しずつ変えていくことができます。
自信が持てなくなる4つの理由

自信が持てなくなる理由は1つではなく、いくつかが重なっていることがほとんどです。
①「できなかったこと」に目が向きやすい考え方のクセ
人には、物事を受け取るときの考え方のクセがあり、心理学では「認知の歪み」と呼ばれています。

自信がないときは、できたことよりもできなかったことに目が向くクセが働きがちです。
- 全か無か思考:9割うまくいっても、1つミスがあれば「失敗だ」と思う
- 過度の一般化:1回のミスで「自分はいつもダメだ」と思う
- マイナス化思考:褒められても「たまたまだ」「お世辞だ」と思う
高すぎる基準を自分に課す完璧主義も、このようなクセを強めやすいと言われています。
基準が高いほど、どれだけがんばっても「まだ足りない」と感じやすくなるからです。
周りから評価されているのに「自分には実力がない」と感じ続ける状態は、「インポスター現象」と呼ばれることもあります。
②他人と比べてしまう
人には、他の人と比べることで自分の能力や立場を確かめようとする性質があります。
これは「社会的比較」と呼ばれ、誰にでも起こる自然な心の働きです。
自分より上だと感じる人と比べると、自分の評価は下がる傾向があります。
SNSでは他の人のうまくいった場面が目に入りやすいため、比べて落ち込む機会も増えやすいと思われます。
③「できた」という経験が少ない
バンデューラは、自己効力感を高めるものの中で、最も影響が大きいのは自分で実際にやってみて、できた経験だと考えました。
これを「成功体験(遂行行動の達成)」と呼びます。

逆に言えば、「できた」経験が少ない分野では、自己効力感は育ちにくくなります。
たとえば、人前で発表した経験が少ないと、「自分にはプレゼンは無理だ」と感じやすくなります。
自信は頭で考えて生まれるものではなく、経験から育つものです。
④否定された経験や、受け入れてもらえなかった経験
人は、周りから受け入れられているかどうかを、自尊感情を通して感じ取っているという考え方があります。
そのため、強く批判された経験や、仲間外れにされた経験は、「自分には価値がない」という感覚につながることがあります。
育ってきた環境も影響の1つですが、それだけで自信のあり方が決まるわけではありません。
自尊感情は大人になってからも変わり続け、平均的には中年期にかけて高まっていくことが、長期間の追跡研究で報告されています(Orth et al., 2012)。
ここまでの4つのうち、どれが自分に近いかを考えてみることが、自信を育てる第一歩になります。
自信のなさが続く仕組み

自信のなさは、一度生まれると、自分で強めてしまう悪循環に入りやすい特徴があります。

挑戦を避けると、その場の不安は軽くなります。
その一方で、「やってみたら意外とできた」と確かめる機会も失われてしまいます。
さらに、うまくいったときも「たまたまだ」と受け取ると、「できた」経験が自信として積み重なりません。
このように、避けることと、できたことを認めないことの2つが、自信のなさを長引かせる原因になります。
自信は、挑戦する前に持っておくものではなく、挑戦したあとからついてくるものです。

「自信がついたらやろう」と待つより、「自信がないまま、小さく試してみる」方が、結果的に自信につながりやすいと思います。
自信を少しずつ育てる5つの方法

自信は一度に大きく変わるものではありませんが、日々の小さな工夫で少しずつ育てることができます。
①小さな「できた」を積み重ねる
自信を育てる一番の土台は、先ほど触れた「できた」経験です。
いきなり大きな目標を立てるのではなく、確実にできそうな小さな目標から始めることがポイントになります。
- 会議で意見を言うのが怖い → まずは1回だけ質問してみる
- 運動が続かない → まずは1日5分歩く
- 人に話しかけるのが苦手 → まずは自分からあいさつだけしてみる
できたことは、その日のうちにメモやスマホに1行で書き残しておくのもおすすめです。
「できた」を目に見える形で残すと、「自分にはできることがある」という実感を後から確かめやすくなります。
小さな目標をクリアしたら、少しずつ難しさを上げていきます。
階段を一段ずつ上るように進めると、「できた」経験が自信として積み重なっていきます。
②「事実」と「評価」を分けてみる
自信が下がっているときは、起きた出来事そのものよりも、そこに自分が乗せた評価に苦しめられていることがあります。
そこで、出来事を「事実」と「評価」に分けて書き出してみる方法があります。
- 事実:資料に誤字が1つあった
- 評価:自分は仕事ができない人間だ
分けてみると、事実そのものは思っていたより小さいことに気づける場合もあります。
そのうえで、次のような問いかけをしてみると、別の見方が見つかることもあります。
- 同じことを友人がしていたら、何と声をかけるか
- 「いつもダメ」と言える証拠は、本当にそろっているか
- うまくいった部分は、どこにあったか
無理にポジティブに考え直す必要はありません。
目指すのは、悪い面だけでなく良い面も含めた、バランスのとれた見方です。

心理療法の1つである認知行動療法には、出来事の受け取り方を見直して、偏りの少ない見方を探す「認知再構成法」という方法があります。ここで紹介したやり方も、その考え方に近いものです。
③自分にかける言葉を変える
自信を持とうとして、「私は価値のある人間だ」と自分に言い聞かせる方法がよく紹介されます。
しかし、自尊感情が低い人が「私は愛される人間だ」と繰り返したところ、かえって気分が落ち込んだという実験があります(Wood et al., 2009)。
心から信じられない言葉を繰り返すと、「でも本当は違う」という気持ちが強まってしまうのかもしれません。
そこで役立つのが、自分を無理に持ち上げるのではなく、自分をいたわる言葉をかけることです。
- 「失敗して落ち込むのは、それだけ真剣だったからだ」
- 「うまくいかないこともある。次はやり方を少し変えてみよう」
このように、つらいときの自分に、友人に接するような思いやりを向ける態度を「セルフ・コンパッション」と呼びます。
セルフ・コンパッションを育てる練習によって、自分を責める気持ちや落ち込みがやわらいだという報告もあります。
④比べる相手を「過去の自分」にする
他人と比べること自体は自然な心の働きなので、まったく比べないようにするのは難しいものです。
そこで、比べる相手を他人から「過去の自分」に変えてみるのも1つの手です。
- 半年前より、仕事の段取りが早くなった
- 前は言えなかった「手伝ってほしい」を、今日は言えた
他人と比べると「足りないところ」が目に入りやすい一方、過去の自分と比べると「できるようになったこと」が見えやすくなります。

SNSを見て落ち込むことが多いときは、見る時間を決めるなど、比べるきっかけ自体を少し減らすのも1つの方法です。
⑤信頼できる人の力を借りる
自分では気づけない良いところも、周りの人からは見えていることがあります。
バンデューラも、信頼できる人からの励ましや、自分に近い人がうまくいく姿を見ることが、自己効力感を支えると考えました。
- 信頼できる人に「自分の良いところ」を聞いてみる
- 褒められたら、否定せずに「ありがとう」とだけ返してみる
- 自分と似た立場の人が、どうやって乗り越えたかを聞いてみる
特に、褒め言葉を「ありがとう」で受け取る練習は、「できたことを認めない」悪循環をゆるめる手助けになると思います。

5つを全部やろうとしなくて大丈夫です。できそうなものを1つ選んで、試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
- 「自信がない」には、特定の場面で「自分にはできる」と思えない状態(自己効力感の低さ)と、場面を問わず「自分には価値がある」と思えない状態(自尊感情の低さ)の2つがある
- 自信が持てなくなる理由には、考え方のクセ・他人との比較・「できた」経験の少なさ・否定された経験がある
- 挑戦を避けることと、できたことを認めないことが、自信のなさを長引かせる
- 自信は、挑戦したあとからついてくる。小さな「できた」を積み重ね、できたことを認めることが、自信を育てる土台になる
自信のなさは、性格の欠点ではなく、これまでの経験や受け取り方から生まれた状態です。
だからこそ、これからの経験によって少しずつ変えていくことができます。
参考文献
- こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」(2024年)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「セルフ・エフィカシーを高めるポイント」(松本千明、2021年)
- 厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル」(慶應義塾大学認知行動療法研究会 編集)







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