精神分析をわかりやすく解説!~②リビドー・心理性的発達理論〜

心理学を学ぶ

リビドー」ということばは、フロイトの名前とあわせて耳にする機会が多い、精神分析を代表することばのひとつです。フロイトは、このリビドー(性的エネルギー)を、人間の行動・感情・人格形成すべての原動力とみなしました。あまりにも中心的な概念だったため、その捉え方をめぐって、フロイトの弟子だったユングやアドラーがフロイトのもとを離れることにもなっています。精神分析の理論を理解するうえで、まさに欠かせないキーワードだと言えるでしょう。

「リビドー」と聞くと、性的な欲望だけを指すことばだとイメージされることが多いかもしれません。しかし精神分析における「リビドー」は、もっと広い意味を持つことばです。

この記事では、「欲動」「リビドー」ということばの意味と、それをもとにした「心理性的発達理論」について、わかりやすく解説していきます。

この記事からわかること
  • 「欲動」「リビドー」とは何か、フロイトがどのような意味でこの言葉を使ったか
  • 心理性的発達理論とは何か、どのような段階で構成されているか
  • 固着」「退行」とは何か、心理性的発達とどう関係しているか

欲動とリビドーとは何か

人には、生まれつき「こう動きたい」「こうしたい」と駆り立てられるような、心のエネルギーが備わっています。フロイトは、これを「欲動(トリーブ)」と呼びました。

たとえば、お腹がすいたら食べたくなる、眠くなったら眠りたくなる、というのも欲動の働きの一つです。

ただし欲動は、熱いものに触れて思わず手を引っ込めるような、体の自動的な「反射」とは違います。反射は体だけの反応ですが、欲動には「食べたい」「眠りたい」という気持ちの動きも伴う、という点がポイントです。

フロイトは当初、欲動を大きく2つに分けて考えていました。

  1. 自己保存欲動:自分の身を守るための欲動
    例)お腹が空いたら食べたくなる、危ないことを避けようとする、など
  2. 性的欲動:心地よい刺激や快感を求める欲動
    例)好きな音楽を聴いて気持ちよくなる、など

なお後年、フロイトはこの2つの欲動を、生の欲動(エロス)と死の欲動(タナトス)という枠組みに整理し直しています。

フロイトの理論は時期によって変化していますが、自己保存欲動・性的欲動のうち心地よい刺激や快感を求めようとする性的欲動に関わる心的エネルギーを、フロイトは「リビドー」と呼びました。車にたとえるなら、エンジンを動かすガソリンのようなもの、とイメージするとつかみやすくなります。

「リビドー」に対する誤解

リビドー」と聞くと、性的な欲望だけを指すことばのように思われがちです。
しかし、フロイトが考えていた「性的」の範囲は、日常語で使われる意味よりもかなり広いものでした。
例えば、

  • 赤ちゃんがミルクを飲んで満たされる感覚
  • 何かに夢中になって没頭する感覚
  • あたたかいお風呂にゆっくりつかる心地よさ

なども「リビドー」といえます。
つまりリビドーとは、性的な欲望に限らず、日常の「気持ちいい」を生み出している、幅広い心のエネルギーのことをいいます。

この「無意識のうちに人を動かしている力がある」という視点は、フロイト以降の精神分析的な人格理論や、人の行動の背景にある動機づけを考える現代の視点にも、一定の影響を与えてきたと言われています。

心理性的発達理論とは何か

フロイトは、このリビドーという考え方を、子どもの発達の説明にも応用しました。これが心理性的発達という理論です。リビドー(快感を求めるエネルギー)が向けられる身体の部位は、成長とともに移り変わっていくとフロイトは考えました。

段階おおよその時期快感の中心となる部位・出来事
口唇期0〜1歳頃口(授乳・吸うこと)を通した満足感
肛門期1〜3歳頃排泄のコントロール(トイレトレーニング)
男根期3〜6歳頃生殖器への関心、異性の親への感情(エディプス・コンプレックス)
潜伏期6〜12歳頃性的な関心が落ち着き、学習や友人関係へ関心が向かう
性器期思春期以降リビドーが再び活性化し、成熟した対人関係・性的関係へ向かう

男根期に登場する「エディプス・コンプレックス」は、異性の親への愛着と、同性の親への対抗心が入り混じった葛藤を指すことばです。この時期の葛藤をどう乗り越えるかが、その後の自我超自我の形成に関わっていくと説明されています。

また、それぞれの段階には、その時期特有の満足の得方があります。フロイトは、ある段階で欲求が十分に満たされなかったり、逆に満たされすぎたりすると、リビドーがその段階に「とどまり続ける」ことがあると考えました。これを「固着」と呼びます。

固着と関連して語られるのが、「退行」という考え方です。退行とは、いったん先の段階まで成長した後で、ストレスや強い不安に直面したときに、心が以前の(固着していた)段階に逆戻りしてしまうことを指します。

  • 固着ある段階で欲求が満たされない・満たされすぎることで、リビドーがその段階にとどまり続けること
  • 退行ストレスや不安に直面したとき、心が固着していた段階まで逆戻りすること

下の子が生まれたときに、上の子が急に赤ちゃんのような振る舞いに戻る「赤ちゃん返り」は、退行の代表的な例としてよく挙げられます。

まとめると、フロイトは、子どもが快感を得る対象が成長とともに移り変わっていくと考え、それぞれの時期に、乗り越えるべき特有の課題があるとみなしました。このような流れで理解するとよりわかりやすいと思います。

まとめ

ここまで見てきたように、フロイトは、人を動かす心のエネルギーを欲動と呼び、その中でも性的欲動に関わる心的エネルギーをリビドーと名づけました。そして、そのリビドーが向かう対象が身体の各部位へと移り変わっていく過程を、心理性的発達として整理しました。

なお、フロイトが創始した精神分析は、その後、自我心理学や対象関係論といった理論面の広がりだけでなく、週1回程度の対面面接を中心とする「精神分析的心理療法」という、より実践しやすい形へも枝分かれしながら、現在まで受け継がれています。

この記事のまとめ
  • 欲動人を突き動かす、生まれつき備わった心のエネルギーのこと
  • リビドー:欲動のうち、快感や心地よさを求めることに関わる心のエネルギーのこと
  • 心理性的発達理論子どもの発達や人格形成にリビドーが重要な役割を果たすと考え、幼児期から青年期にかけてのその発達過程を明らかにした理論
  • 固着:ある段階で欲求が満たされない・満たされすぎることで、リビドーがその段階にとどまり続けること
  • 退行ストレスや不安に直面したとき、心が固着していた段階まで逆戻りすること

今回は、人を動かす「欲動」と「リビドー」、そしてそれが発達とともにどう移り変わっていくかという心理性的発達について紹介しました。「なんとなく落ち着く」「なぜか惹かれる」といった感覚の背景にも、こうした心のエネルギーの動きがあるのかもしれません。

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