
ランチのメニュー、結局いつも人に合わせてしまう

ネットで比べているうちに、1時間たっていた

会議で意見を聞かれると、「どちらでも…」と言ってしまう
決めなきゃいけないのに、なかなか決められない。
そんな自分にうんざりしている方もいるかもしれません。
結論から言うと、決められないのは性格の欠点ではなく、その場面の重さや「失敗したくない」「後悔したくない」という不安から、決めること自体を避けてしまっている状態です。
何が判断を重くしているのかを知り、完璧な正解ではなく「これで十分」で決めることで、少しずつ決めやすくなります。
- 優柔不断とは、いろいろな場面でくり返し決めにくさを感じる傾向のことで、性格の欠点ではない
- 慎重な人は落ち着いて比べて決め、優柔不断なときは不安から先延ばしや人任せになりやすい
- 特定の場面だけ決められないときは、時間のなさや責任の重さなど、その場面に判断を重くする条件がある
- いつも決められないときは、失敗や後悔への不安、比べ続けるクセなどが関わっている
- 「何が重いか書き出す」「これで十分で決める」「決めたら比べ直さない」などで、少しずつ決めやすくなる
優柔不断とは

「優柔不断」は日常でよく使われる言葉ですが、心理学でも研究の対象になっています。
いろいろな場面で「決めにくい」傾向
心理学では、優柔不断を次のように説明します。
優柔不断とは、時間や場面を問わず、物事を決めることに難しさを感じやすい傾向のことです。
これとよく似たものに、進路選択などの特定の場面で、一時的に決められなくなる状態があります。
こちらは誰にでも起こるもので、研究でも、いつも決めにくい傾向とは別のものとして区別されています。
優柔不断は病気の名前ではなく、性格の欠点でもありません。
決めることに時間がかかるのには、それなりの理由があります。

つまり優柔不断とは、「ある場面だけ」ではなく「いろいろな場面で」決めにくさをくり返し感じる状態のことです。
「慎重」との違い
「よく考えるのは悪いことなの?」と感じる方もいると思います。
よく考えること自体は、むしろ大切です。
オーストラリアの心理学者マンらは、人がどうやって決めているかを、4つのパターンに分けて調べています。
これは優柔不断な人だけの分類ではなく、誰もが決めるときに取りうる決め方です。同じ人でも、場面によってどの決め方にもなります。
4つのうち、望ましい決め方とされているのは慎重型だけです。
残りの3つは、どれも決めることのストレスや不安から生まれる決め方と考えられています。
- 慎重型:情報を集め、選択肢を落ち着いて比べてから決める(望ましい決め方)
- 先延ばし型:決めることを後回しにする
- 人任せ型:決めることを人にゆだねて、責任を避ける
- 焦り型:不安で頭がいっぱいになり、慌てて決めてしまう
時間がかかっても、落ち着いて比べて決められているなら、それは慎重さです。
優柔不断で困っているときは、慎重型ではなく、不安から先延ばしや人任せになって、自分で決められなくなっていることが多いと思います。

考える時間の長さよりも、「不安から決めることを避けていないか」が、慎重さとの分かれ目です。
「その場面だけ」と「いつも」で異なる決められない理由

決められないとき、まず見てみたいのが、それが特定の場面だけなのか、どんな場面でもなのかという点です。
- ランチや買い物はすぐ決められるのに、仕事の判断だけ決められない
- 転職や引っ越しのような大きなことになると、急に決められなくなる
- ランチも服も休日の予定も、何を決めるにも時間がかかる
上の2つは「特定の場面だけ」、3つ目は「いつも」に近い例です。
進路選択についての研究では、特定の場面での迷いは、気持ちを整えるスキルなどと関係が深いと報告されています。
一方、いつも決めにくい傾向は、気持ちの揺れやすさなどの性格的な特徴や、自分への評価の低さと関係が深いとされています。
人がきれいに2つに分かれるわけではありませんが、自分がどちらに近いかを考えると、見るべきところが変わってきます。
特定の場面だけ決められないとき
さきほどの4つの決め方の考え方では、どの決め方になるかは、性格だけでなくその場の条件によって変わると考えられています。
たとえば、時間が足りないと感じると、焦り型の決め方になりがちです。
どれを選んでも損がありそうで、良い答えが見つかる望みが持てないときは、先延ばしや人任せに傾きやすいとされています。
- 失うものや責任が大きい(転職、引っ越し、人に迷惑がかかりそうな判断)
- 時間が足りない、せかされている
- どれを選んでも、何かをあきらめる必要がある
- その場面そのものがストレス(苦手な人が関わる、断ると角が立ちそう)
ふだんはすぐ決められる人でも、このような条件が重なると決められなくなるのは自然なことです。
特定の場面だけ決められないなら、その場面の「何が重いのか」を考えることが、決めやすくなる手がかりになります。
人間関係が絡む場面については、こちらの記事も参考になるかもしれません。
どんな場面でも決められないとき
どんな場面でも決めにくいときは、決めることそのものに対する考え方のクセが関わっていることがあります。
よく挙げられるのは、次の4つです。
①失敗や後悔がこわい
人は何かを選ぶとき、「あとで後悔したらどうしよう」と、まだ起きていない後悔を先回りして予想しています。
この予想が強いほど、決めることそのものを避けたくなると考えられています。
優柔不断の土台には、「間違った選択をしたくない」という、ミスへのとらわれがあるという見方もあります。
②比べるのをやめられない
できるだけ一番良いものを選ぼうとする傾向を、心理学では「最大化傾向」と呼びます。
最大化傾向とは、「これで十分」で止まらず、できるだけ一番良い選択肢を探そうとする傾向のことです。
最大化傾向が強い人ほど、選んだあとに後悔しやすいと報告されています。
ただ、その後の研究では、「一番良いものを求めること」自体より、「比べ続けるのがつらい」「なかなか決められない」と感じる部分が、優柔不断と結びついていると考えられています。
③「どうなるか分からない」のがつらい
先のことが分からない状態に耐えにくい傾向を、「不確実性への不耐性」と呼びます。
「正解が分かるまで決めたくない」という気持ちが強いと、いつまでも迷ってしまいます。
実験でこの傾向を一時的に強めた人は、弱めた人よりも、くじ引きのような選択で迷いが大きくなったという研究もあります。
まだ予備的な結果ですが、「分からなさ」への耐えにくさが、決めにくさの一因になっている可能性が示されています。
④自分の判断に自信が持てない
「自分ならうまくやれる」という見通しを、心理学では「自己効力感」と呼びます。
自己効力感や自分への評価が低いと、決める前から「どうせ間違える」と感じてしまうことがあります。
決められないときに人任せや先延ばしにすると、その場は楽になります。
その一方で、「自分で決めてうまくいった」という経験が増えないため、自信が育ちにくくなることもあります。
周りの人の目が気になって、自分の希望より相手の顔色を優先してしまうという方もいるかもしれません。
自信のなさについては、こちらの記事で詳しく取り上げています。
自分が決められなくなりやすい場面を知る
ここまで、決められない理由を「その場面だけ」と「いつも」に分けて見てきました。
決められない自分を直そうとする前に、「自分はどんな場面で決められなくなりやすいか」を知っておくと、それだけで少し楽になることがあります。
人が関わる場面なのか、お金が絡む場面なのか、時間がないときなのか。
パターンがわかると、「また決められなかった」と自分を責める代わりに、「この場面は自分にとって重いんだな」と受け止めやすくなると思います。

もともとはそうでもなかったのに、最近になって何を決めるにも迷うようになった、というときは、性格ではなく心の疲れのサインのこともあります。記事の後半の「専門家への相談を考えたいとき」も参考になるかもしれません。
迷いを軽くする5つのコツ

迷いを軽くするコツも、「その場面だけ」か「いつも」かで少し変わります。
①②は特定の場面で決められないとき、③〜⑤はどんな場面でも決められないときに向いた方法です。
①何が判断を重くしているのか書き出す
特定の場面だけ決められないときは、その場面の何が重いのかを、紙やスマホのメモに書き出してみる方法があります。
頭の中だけで考えていると、いろいろな不安がひとかたまりになって、ただ「重い」としか感じられないことがあるからです。
- 責任:家族の生活に関わる
- 時間:今の会社に、来月までに返事をする必要がある
- あきらめるもの:今の職場の人間関係、慣れた仕事
- 本当に気になっていること:新しい職場でやっていけるか
書き出してみると、「決められない」の中身が、「新しい職場でやっていけるかが不安」のように、具体的な1つの心配に絞れることがあります。
心配がはっきりすれば、職場見学を頼む、経験者に話を聞くなど、次にやることも見えてきます。
②決める期限を自分で決め、必要なら時間をもらう
時間が足りないと焦り型に、期限があいまいだと先延ばし型に傾きがちです。
そのため、「いつまでに決めるか」を自分で決めておくことが助けになります。
- 「金曜日の夜までに決める」と、カレンダーに書いておく
- その場で決められないときは「少し考えて、明日の昼までにお返事します」と伝える
- 迷っていることを人に話して、自分では気づかなかった選択肢や情報をもらう
人に相談するのは、選択肢や情報を増やすためのものです。
最後に決めるところまで人に任せると、自分で決めた経験が増えないため、決めるのは自分、と分けておくのがおすすめです。
③「これで十分」で決める
どんな場面でも比べ続けてしまう人には、「満足化(サティスファイシング)」という考え方が役に立つかもしれません。
満足化とは、一番良いものを探し続けるのではなく、あらかじめ決めた「これで十分」という基準を満たすものが見つかったら、そこで決める決め方のことです。
経済学者・心理学者のハーバート・サイモンは、人は実際には、すべての選択肢を比べて最良を選ぶのではなく、「十分に満足できるもの」を見つけたところで決めていると考えました。
- 買い物:予算5,000円以内・評価が星4以上・週末までに届く → 最初に条件を満たしたものに決める
- お店選び:駅から10分以内・予約できる → 2軒目までで決める
- 調べる量:比べるのは3つまで、調べる時間は15分まで
基準は、比べ始める前に決めておくのがコツです。
比べながら基準を決めると、あとから見つけた良さそうなものに、基準のほうが引っぱられてしまいます。
④決めたら比べ直さない
決めたあとも口コミを見続けたり、「やっぱりあっちのほうが良かったかも」と考え続けたりすることはありませんか。
写真を選んでもらう実験では、あとから交換できる条件の人のほうが、交換できない人より、選んだ写真への満足度が低かったと報告されています。
「まだ変えられる」と思っていると、選んだものの良いところに目が向きにくくなるようです。
- 買ったあとは、その商品の口コミやランキングを見ない
- 「もう決めたこと」と、自分の中で区切りの言葉をかける
- 選んだものの良かったところを、1つ見つけてみる
決めたことを何度も頭の中で考え直してしまうクセについては、こちらの記事でも解説しています。
⑤小さなことから自分で決めてみる
自己効力感は、実際に「自分でできた」という経験を重ねることで、最も育ちやすいとされています。
決めることも同じで、小さなことから自分で決めてみる経験が、少しずつ自信につながっていきます。
- ランチのメニューを、メニューを開いて1分以内に決める
- 休日の予定を、人に聞く前に自分で1つ決めておく
- 「どちらでもいいよ」と言いそうになったら、「じゃあ、こっちがいいな」と言ってみる
決めた結果が多少イマイチでも、大きな問題が起きないことがほとんどです。
「イマイチでも大丈夫だった」と知ること自体が、次に決めるときの支えになると思います。

5つを全部やろうとしなくて大丈夫です。自分が「その場面だけ」と「いつも」のどちらに近いかを考えて、できそうなものを1つ選んでみてはいかがでしょうか。
専門家への相談を考えたいとき
決められないことは、多くの人が感じる悩みです。
一方で、ほかのつらさと重なって、生活に大きな影響が出ていることもあります。
うつ病の診断基準の1つには、「考える力や集中力が落ちる、または決めることが難しくなる状態が、ほとんど毎日続く」という項目があります。
まとめ
- 優柔不断は性格の欠点ではなく、慎重さとの違いは「不安から決めることを避けているかどうか」
- 特定の場面だけ決められないときは、時間のなさや責任の重さなど、その場面の条件を見てみる
- どんな場面でも決められないときは、失敗や後悔への不安、比べ続けるクセなどが関わっている
- 「何が重いか書き出す」「これで十分で決める」「決めたら比べ直さない」などで、少しずつ決めやすくなる
決められないのは、だめな性格だからではなく、その場面の重さや考え方のクセが重なっているからです。
完璧な正解を探すより、「これで十分」と思えるところで決めていいと考えると、少し気持ちが楽になるかもしれません。
参考文献
- Frost, R. O., & Shows, D. L. (1993). The nature and measurement of compulsive indecisiveness. Behaviour Research and Therapy, 31(7), 683–692.
- Mann, L., Burnett, P., Radford, M., & Ford, S. (1997). The Melbourne Decision Making Questionnaire: An instrument for measuring patterns for coping with decisional conflict. Journal of Behavioral Decision Making, 10(1), 1–19.
- Schwartz, B., Ward, A., Monterosso, J., Lyubomirsky, S., White, K., & Lehman, D. R. (2002). Maximizing versus satisficing: Happiness is a matter of choice. Journal of Personality and Social Psychology, 83(5), 1178–1197.
- Gilbert, D. T., & Ebert, J. E. J. (2002). Decisions and revisions: The affective forecasting of changeable outcomes. Journal of Personality and Social Psychology, 82(4), 503–514.
- Appel, H., & Gerlach, A. L. (2025). Intolerance of uncertainty causally affects indecisiveness. British Journal of Clinical Psychology, 64(3), 806–816.







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