ハヴィガーストとエリクソンの違いとは?発達課題と心理社会的発達理論を比較してわかりやすく解説

心理学を学ぶ

人生を段階に分けて捉える理論として、よく一緒に紹介されるのが、ハヴィガーストの発達課題と、エリクソンの心理社会的発達理論(ライフサイクル論)です。
どちらも乳幼児期から老年期までを扱うため似た理論に見えますが、2つの理論は「人生の各時期の何を見ているか」が違います。

  • ハヴィガーストは各時期に「何に取り組むか」
  • エリクソンは各時期に「どんな心が育つか」

を示した理論です。

たとえば進学先を選ぶとき、
ハヴィガーストは「職業の選択と準備」という課題に取り組んでいると捉え、
エリクソンは「自分は何者で、何をしたいのか」という同一性が問われていると捉えます。

この記事でわかること
  • ハヴィガーストは各時期に「何に取り組むか」、エリクソンは「どんな心が育つか」を示した理論で、ここが一番大きな違い
  • ハヴィガーストは教育学の立場から6つの段階、エリクソンは精神分析の立場から8つの段階で人生を分けた
  • 理論の立場・課題の中身・段階の分け方・つまずいたときの捉え方・重視する考え方の5つの違い
  • 2つの理論は対立するものではなく、同じ出来事を別の角度から見ている

ハヴィガーストとエリクソンの違いとは

ハヴィガーストは各時期に「何に取り組むか(具体的な行動や役割)」、
エリクソンは各時期に「どんな心が育つか(心の葛藤と心の力)」
を示した理論です。

まず、2つの理論をそれぞれ1文で確認します。

  • ハヴィガーストの発達課題:人生を6つの段階に分け、それぞれの時期に達成することが期待される課題を、「歩行の学習」「職業の選択と準備」のような具体的な行動や役割の形で示した理論
  • エリクソンの心理社会的発達理論(ライフサイクル論):人生を8つの段階に分け、各段階で向き合う心理社会的危機と、それを乗り越えて得られる徳(心の力)を、「基本的信頼 対 基本的不信」のような対の形で示した理論

ハヴィガーストの課題は、「歩く」「職業を選ぶ」のように、その時期に何に取り組むかを示しています。一方、エリクソンの危機は、その時期の経験を通して、人を信頼できるか、「がんばれば自分もできる」と思えるかといった、どんな心が育つかを示しています。

つまり2つの理論の一番大きな違いは、「何に取り組むか」を見るか、「どんな心が育つか」を見るかです。

比較表で見る2つの理論の違い

比較のポイントハヴィガーストエリクソン
立場教育学精神分析
理論の目的いつ、何を学ぶ機会を用意するとよいかを考える心(人格)が一生を通してどう育つかを理解する
段階の数6段階8段階
各段階の中身具体的な行動や役割(発達課題)が複数肯定的な傾向と否定的な傾向が対になった心理社会的危機が1つ
何から生じるか身体の成熟・社会からの要請・個人の価値観と願望心の成長と、周りの人や社会から求められること
乗り越えると得られるもの本人の幸福と、その後の課題の達成徳(希望・意志などの心の力)
つまずいたとき本人の不幸や社会からの不承認、その後の課題の難しさにつながる後の段階の人間関係や経験のなかで取り戻せる
キーワードティーチャブル・モーメント漸成原理、徳、アイデンティティ
主な著書『人間の発達課題と教育』(1953年)『幼児期と社会』(1950年)
  • どちらの理論も、各段階の年齢は目安です。エリクソン自身は細かい年齢を定めておらず、文献によって区切り方や段階の呼び方が少しずつ異なります。
  • 日本語の解説では、エリクソンの心理社会的危機も「発達課題」と呼ばれることがあります。どちらの理論の話かは、言葉ではなく「〇〇 対 △△」の対の形かどうかという中身で見分けるのが確実です。

ここからは、表の中でも特に大切な5つの違いを順番に説明します。

ハヴィガーストとエリクソンの5つの違い

  • 理論の立場と目的
  • 課題の中身
  • 段階の分け方
  • つまずいたときの捉え方
  • 重視する考え方

理論の立場と目的

ハヴィガースト

ハヴィガーストは教育学者です。「子どもにいつ、何を学ぶ機会を用意するとよいか」を考える手がかりとして、発達課題を整理しました。そのため、学校教育や子育ての計画を考えるときに、目安として使いやすい形になっています。

エリクソン

エリクソンは精神分析家です。フロイトの心理性的発達理論を土台にしながら、人との関わりや社会の影響を重視し、心がどのように育っていくかを老年期までの一生の流れで説明しました。

ハヴィガーストは「教える側」の目線、エリクソンは「育つ本人の心の中」の目線で書かれた理論だと考えると、わかりやすいと思います。

課題の中身

ハヴィガースト

ハヴィガーストの発達課題は、「歩行の学習」「読み・書き・計算の基礎的な能力の発達」「配偶者の選択」のように、具体的な行動や役割の形で書かれています。1つの段階に、課題が複数並んでいるのも特徴です。

「価値観や倫理の体系の獲得」のように心の面に関わる課題も含まれますが、いずれもその時期に取り組む内容として示されています。

エリクソン

エリクソンの心理社会的危機は、「勤勉性 対 劣等感」のように、肯定的な傾向と否定的な傾向のせめぎ合いとして表されます。1つの段階に、危機は1つだけです。

そして、肯定的な傾向が上回るバランスで危機を乗り越えると、徳と呼ばれる、その後の人生を支える心の力が得られると考えました。

見分け方のポイント
  • 「〇〇 対 △△」の形 → エリクソン
  • 「〇〇の学習」「〇〇への適応」のような行動・役割の形 → ハヴィガースト

段階の分け方

ハヴィガーストは人生を6つ、エリクソンは8つの段階に分けました。

ハヴィガーストの6段階とエリクソンの8段階の区切りを、年齢の目盛りに沿って並べた比較図

特に違いが大きいのは、生まれてから6歳ごろまでの時期です。ハヴィガーストはこの時期を「乳幼児期」として1つにまとめていますが、エリクソンは乳児期・幼児期前期・幼児期後期の3つに分けています。

これは、エリクソンの最初の3つの段階が、フロイトの口唇期・肛門期・男根期にそれぞれ対応しているためです。

6〜12歳ごろは、区切りは同じでも、ハヴィガーストでは「児童期」、エリクソンでは「学童期」と呼び方が違います。

大人になってからの区切りも違います。ハヴィガーストは「壮年初期(18〜30歳ごろ)」「中年期(30〜60歳ごろ)」、エリクソンは「成人期前期(20〜40歳ごろ)」「壮年期(40〜65歳ごろ)」と分けています。同じ「壮年」という言葉でも、指している年齢が違うため、どちらの理論の話なのかを確認することが大切です。

つまずいたときの捉え方

ハヴィガースト

ハヴィガーストは、課題を達成できれば本人の幸福とその後の課題の達成につながり、達成できなければ本人の不幸や社会からの不承認、その後の課題の難しさにつながると説明しました。課題を達成できたかどうかという見方が基本です。

エリクソン

エリクソンは、危機を「成功か失敗か」ではなく、肯定的な傾向と否定的な傾向のバランスで捉えました。否定的な傾向をなくすことが目標ではなく、肯定的な傾向が上回ることが大切とされています。たとえば「基本的不信」も、ある程度は危険を見分けるために必要です。

また、前の段階でつまずいても、後の段階の人間関係や経験のなかで取り戻していけると考えられています。

つまり各発達段階の課題について、ハヴィガーストは「できたか、できなかったか」、エリクソンは「どちらの傾向が上回っているか」で、それぞれ発達を見ています。

重視する考え方

ハヴィガースト

ハヴィガーストが重視したのは、ティーチャブル・モーメントです。体の準備ができ、社会からも求められ、本人もやってみたいと思う時期が、その課題を最も学びやすい時期だとしました。

エリクソン

エリクソンが重視したのは、漸成原理です。心の発達は決まった順序で進み、それぞれの段階が前の段階の上に積み重なっていくという考え方です。

ハヴィガーストが「いつ学ぶとよいか」というタイミングに注目したのに対して、エリクソンは「どの順序で心が育つか」という積み重なりに注目しました。

同じ出来事を2つの理論で見る

2つの理論の違いは、同じ出来事にあてはめてみるとよくわかります。

九九を覚える(6〜12歳ごろ)
  • ハヴィガースト:「読み・書き・計算の基礎的な能力の発達」という課題に取り組んでいる
  • エリクソン:やり遂げる喜びから勤勉性が育つ一方、友だちと比べて劣等感を抱くこともある(勤勉性 対 劣等感)
進学先を選ぶ(青年期)
  • ハヴィガースト:「職業の選択と準備」という課題に取り組んでいる
  • エリクソン:「自分は何者で、何をしたいのか」という同一性が問われている(同一性 対 同一性拡散)
定年退職する(老年期)
  • ハヴィガースト:「退職と収入の減少への適応」という課題に取り組んでいる
  • エリクソン:これまでの人生を振り返り、「これでよかった」と受け入れられるかどうかが問われている(統合 対 絶望)

ハヴィガーストはその出来事を通して何に取り組んでいるかを、エリクソンはその出来事を通してどんな心が育つかを見ています。
2つの理論は対立するものではなく、同じ人生を別の角度から見ています。

ハヴィガーストとエリクソンの共通点

違いが多い2つの理論ですが、共通点もあります。

  • 人生を乳幼児期から老年期までの一生として捉えている
  • 前の段階が、後の段階の土台になると考えている
  • 体の成長だけでなく、社会の影響を重視している
  • 1950年前後のアメリカで生まれた理論である

特に、発達を子どもの時期だけでなく、大人になってからも続くものとして捉えた点は、2つの理論に共通する大きな特徴です。

一方で、どちらの理論にも、当時のアメリカの価値観が反映されていると指摘されています。結婚や子育て、性別ごとの役割などは、現在の社会や一人ひとりの生き方に合わせて読みかえることが大切だと思います。

まとめ

この記事のまとめ
  • ハヴィガーストは各時期に「何に取り組むか(具体的な行動や役割)」を、エリクソンは各時期に「どんな心が育つか(心の葛藤と心の力)」を示した
  • ハヴィガーストは教育学の立場から6段階、エリクソンは精神分析の立場から8段階に人生を分けた
  • ハヴィガーストの課題は「〇〇の学習」のような行動や役割の形、エリクソンの危機は「〇〇 対 △△」のような対の形で表される
  • 各発達段階の課題について、ハヴィガーストは「できたか、できなかったか」で、エリクソンは「どちらの傾向が上回っているか」で発達を見る
  • ハヴィガーストはティーチャブル・モーメント、エリクソンは漸成原理を重視した
  • 2つの理論は対立するものではなく、同じ人生を別の角度から見ている

それぞれの理論の各段階は、ハヴィガーストの発達課題の記事と、エリクソンの心理社会的発達理論の記事でくわしく解説しています。

参考文献

  • R・J・ハヴィガースト(著)荘司雅子(監訳)(1995)『人間の発達課題と教育』玉川大学出版部
  • E・H・エリクソン(著)仁科弥生(訳)(1977)『幼児期と社会 1』みすず書房

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